人生の選択

行政職と、企業の研究所の最終面接が同じ日になってしまった。

行政職の方が面会時間が早く、企業の方がそれから1時間後にあった。

両方とも行くわけにはいかない・・・・。

片や行政、片や研究。さて、どちらを選ぶか。

国の試験を通った行政職というのは、一般に、キャリアと呼ばれるエリートである。(ただし当時、私にはそんな認識はなかったが。)

だが、私にはどうしても、研究への道・・それは不老不死へとつながる・・をあきらめたくはなかった。

私の中で信念、名誉心、虚栄心、執着心、等々、さまざまな感情が葛藤を繰り返した。

 

結局、私はその前夜、この究極の選択を考え、一睡もできなかった。

ふと時計を見た。すると、もう行政職の面接には間に合わない時間になっていた。

そうか、もう私は行政には行かないで、研究を続けることにしよう。

そう思った瞬間だった。私の部屋の電話が鳴った。

行政の担当者だった。約束の時間になっても姿を見せない私のことを案じ、連絡をくれたのだった。

私は正直に、事情を話した。するとその担当者は言った。

「もし、そんなに迷っているのであれば、自分が保障する。騙されたと思ってこちらに来い。」

 

私は、その言葉に後押しされ、それから急いでその面接に行った。

その後、すったもんだあった。君は行政に向かないのではないか。研究に行った方がよかったのではないか。

そうした言葉を言われたが、結局、私は行政を選んだ。

私は大きな人生の選択をしたのである。

 

その後のことは今は詳しく書くつもりはない。

まあ、職に就いた後も、いろいろなことがあった。

留学もした。国際機関にも勤務した。

私のあのときの選択が間違いだったか否か。それは、今でも分からない。

だが、あの、学生時代の、激しく揺れ動いた気持ちというものは、私にとっては今でも目を閉じればまざまざと眼前に蘇る。

あれはまさに、不安定であるが、ひたすら可能性を求めて努力した時代だった。

今、退職という節目を迎え、その時の、ひたむきな気持ちを再び取り戻したい。そうした思いが私の根底にあるのは事実だ。

 

ずいぶんこれまでの私の人生の説明が長くなってしまった。

次回からはいよいよ、医学部受験と司法試験の二刀流について話したい。