わずか1か月の勉強で国の試験にも・・・・

正確な時期は忘れたが、夏休み頃から、私は自分の研究について悩むとともに、将来の進路について悩み始めた。

このまま博士課程に進学して、本当に立派な研究者になれるのかという疑問が頭をもたげた。

それよりも、そもそも自分は研究が好きなのか、一生の仕事としてやっていけるのかという疑問がわいてきた。

ただ私は、そんな時になってもなお、不老不死の薬を作りたい、そしてそれでノーベル賞を取りたいという夢を捨てきれずにいた。

 

そんな時である。国の仕事をするための試験があることを知ったのは。

ずいぶん間抜けな話であるが、私はその時までその試験の存在を知らなかった。

そして、その試験に通れば、国の研究所に勤めることも、また行政の仕事をすることも可能だった。

だが、既に試験まで1か月を切っていた。

 

私は、研究を続けながら、その1か月、しゃかりきになって勉強した。

政治、経済などの勉強はほとんどやらなかった。やっても無駄だと思った。

だが、2年前に大学院入試と大学入試の勉強を完璧にやっていたことが、この時活かされた。

教養関係、数的推理等は、どんな問題でもあっというまに解答できた。

 

実際の試験では、私はかなりできたと思った。

特に筆記試験の問題の1つに、「がん遺伝子について知っていることを記せ。」という問題が出たときには思わずニヤリとした。

そうして目的の機関の面接に臨んだ。

ただ、行政の面接は私は苦手だった。さんざん、志望動機について聞かれたが、私は1つとして満足に答えられなかった。

だが、試験の成績が良かったのだろう。(あとで聞いたところ、全体で2番だったとのことだった。)私は何とか面接を進んでいった。

 

だが一方で、私は研究者をあきらめていなかった。

大学の先生から、ある会社の研究所を紹介されていた。

当時はライフサイエンスがちょうど花が開きかけていた頃だった。各社とも研究に力を入れていた。

私はその中でも比較的自由に好きな研究をさせてくれるという研究所を紹介されていたる

そちらの方の面接も順調に進んだ。

 

ところが、最後になって、私の人生にとって大きな分かれ道が待っていた。

両方の最終面接が同じ日になったのである。