頭が確実に悪くなった!
そうして、今年4月から、私はひたすら、勉強した。
仕事もあるが、その合間を縫うようにして。
とにかく、毎日8科目、少しずつでも、意地でもやり通そうと思った。
勉強は、新鮮だった。
医学部受験に関して言えば、約35年ぶりの勉強である。懐かしい。
そして、どの科目も、初めの方は導入で、簡単なもの、基本的なものから入っている。
たとえば数学は、因数分解とか。ほどなく思い出した。
aの3乗+bの3乗+cの3乗−3abc=(a+b+c)(aの2乗+bの2乗+cの2乗-ab-bc-ca)・・・・
化学も、理論から勉強し始めたが、苦労して物質名等を覚える必要がないため、楽だった。
物理も、力学から始めたが、一から改めて理論を勉強したため、まあまあ分かった。
ただ地理は、系統地理からやり始めたものの、ほとんど覚えられなかった。気候や土壌のところでつまずいた。
村瀬の参考書がわかりやすく、網羅的でもあることは分かっていても。
一方、司法試験は、新鮮だと思えたのは最初の数日。すぐにつまずいた。
自分は法律については、実は何も知らなかったことがよく分かった。
大昔、国の試験を受けた時は、一切、法律の勉強はしなかった。しかしそれでも何とか受かった。
じゃあ行政で、実際に法律の知識を使うかというと・・・・
そりゃ、担当している業務の関係の法令を十分知っておくのはマストだ。
だが、その法令についてはやたら詳しくなっても、それだけである。
私は法令の改正にも携わったことがある。
ただ、それは条文をああでもない、こうでもないとひねくり回しただけだった。
いろいろなところへ根回しをしたり、答弁を考えたりと、現実の世界に気を配っていた。
これらを改めて学ぶと、なかなか理解ができないのである。
本当は、実際に法律に接して業務を行っていたのだから、すうっと入ってこなければならないはずなのだろうが。
やはり、法律は堅苦しくて苦手なのである。そんな人が司法試験を目指すのも変ではあるが。
こうして、地理や法律でつまずいたことを改めて考えると、いずれも私にとって全く新しい分野だということだ。
つまり、初めてのことが吸収できないのである。
一度やったことがあること、慣れ親しんでいることだけは対応できるが、全くやっていないことは対応できないのだ。
こりゃ、老化の最たるものだ。
いつのまにか、私の頭は、固く固くなっていた。確実に頭は悪くなっていたのである。