東大理Ⅲを受けるんだ

さて、ひそかに東大理Ⅲ受験をもくろんでいた私は、その後も受験勉強を続けていた。

勉強するのが楽しかった。問題が面白いように解けるし、何ら義務もない。

落ちれば大学院に行けばいいだけだ。

まあ、これは私の現在の状況に似ているだろう。ただ、再就職先がまだ決まっていないという点は大いに異なるが・・・・。

その後も試験を受けたが、また理ⅢはA判定が出た。私は、自分の能力が最高度に高まっていることを確信した。

 

私は、共通一次を受けるため、高校に連絡を入れた。相手は部活の担任だった。

彼は私の決意に驚いた。

なんせその高校からは東大に入学するのは非常に珍しい。いわゆる、すごいエリートである。そんな私が方向転換するのである。

しかし、最後は彼は納得してくれ、私に卒業証明を送付してくれた。

私は共通一次を申し込んだ。もう後戻りはできない。

 

おりしも、私は卒業研究を行っていた。

研究は、学位を取得しようと頑張っているある博士課程学生についてやっていた。

とてもいい人だったが、学位取得のためにはまだ取得しないといけないデータがたくさんあった。

私は一緒に実験をしているうちに、次第に研究の楽しさにのめりこんでいった。

自分でいろいろな条件を設定して、それに沿って化学物質の種類や量を変えることで異なる結果が生じる。いわばおもちゃのようなものだった。

来る日も来る日もその人と一緒に研究した。受験勉強をしながら。

 

年が明けた。いよいよ共通一次が近づいてきた。

前にも書いたように、当時の共通一次試験は現在のセンター試験と違って簡単だったので、ほとんど準備をする必要はなかった。しかも東大の場合は二次試験に対する配点比重が低い。

ただ、私は直前には対策用の問題集をやる等、抜かりなく準備していた。

 

しかし、共通一次の数日前になった時である。

共同研究者からこう言われた。

「○○君、どうしてもやらない実験がある。今週末は大学に来てもらいたい。」

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