東大理Ⅲも受けてみようか?

私は、次こそは院試に受かるべく、じっくり考えた。

実は本郷にあるその生物系の科は、進学振り分けでの偏差値は極めて高かった。

全部の学科のうちでも1位か2位にランクされていた。

1年生の丸1年間を棒に振り、専門課程ではかなり生物系を勉強したと自負した私も、

それは相当レベルが高かったのだ。

そこで、とにかく、どんなところから出題されても困らないよう、基礎からじっくり鍛えなおすことにした。

まずは、当時その学科の参考書であったコーンスタンプとストライヤーの教科書を丸ごと覚えた。

「丸ごと」というのは、まさしく丸ごとである。中学校時代に社会で活躍した、わら半紙で問題と解答を表裏に書いてアトランダムに覚えていく方法を復活させた。

信じられないかもしれないが、そこに出てくる物質のあらゆる構造式を覚えた。

ビタミンEの構造式を書けるものが当時いただろうか。自分以外にはいないと自負した。

ただ、ストライヤーは、読めば読むほど、なんと素晴らしい本かと感心もした。自然な疑問を基に実験を進め、その答えから生命のしくみを解き明かしていくような進め方だった。

まるで自分が生命の神秘を解き明かす、その現場にいるような感覚でワクワクしながら読んだ。私にとってはまさにこの分野のファインマン物理学だった。

 

そして、その周辺を固めるべく、ありとあらゆる生物系の本も読んだ。1か月に2冊程度の割合で読破していった。

こうして勉強すればするほど、私の大学時代の勉強がいかに浅薄なものであったかに気づかされたのだ。

 

そして、その一環として、高校の化学や生物も勉強した。

高校生物の教科書はほぼ2か月で読み終わったが、ふと思った。

・・・・これなら大学受験をしても相当な程度の実力になっているのでは?

頭にあったのは東大理Ⅲ、すなわち東大医学部だった。

そして考えた。

どうせ院試では生物も化学も勉強するし、英語も勉強する。

それなら、ついでに理Ⅲも受ければ、勉強が一石二鳥ではないか。

そうして、その時から、私は院試と理Ⅲ受験の両にらみで勉強を進めていくことにしたのだった。