挫折からの脱出

授業に全く出ないまま、1年生が過ぎようとしていた。

自分はこの後、いったいどうなってしまうのだろうか。

まるで他の人たちとうまくやっていけないのだ。

劣等感、落伍感、倦怠感、憂鬱感・・・・ありとあらゆるネガティブな感情が脳の中を支配していた。

それから、他の奴らが東大生であることばかりを鼻にかけ、恰好ばかりつけているように思えてならなかった。自分とは合わないと感じた。

 

だが幸いだったのは、そんな時にUという生涯の親友に出会えたことだった。

Uは私を風呂場で見かけたと言い、自分から声をかけてきた。

そして、いつしか我々は、夢を語り合うようになっていた。

松山千春に傾倒していたUはギターを弾き、自作の歌を披露してくれた。

それはとても広大な気持ちを表現した歌だった。Uの心の大きさを物語っていた。

 

当時、ゲームとパチンコ(いずれも超一流の腕前になっていた)に凝り固まっていた私は、そんなUに触発された。

また、ずっと仕送りをしてくれる親のことを思うにつけ、いてもたってもいられなくなってきた。

よし、がんばるぞ。

 

そして私は、気分を変えるため、引越しをすることにした。

それまで住んでいた下宿は、東大から歩いて15分のところだった。

だがそれでも授業に出るのが億劫になると思った私は、もっと近いところを探すことにした。近くに住めば、無理やりでも授業に出ざるを得なくなると考えたのだ。

そして、東大の裏門から出てすぐの道路沿い、つまりこれ以上ないほど近いところにアパートを見つけ、移り住んだ。

そこはわずか3畳のところだった。そのアパートそにはもう少し広い部屋もあったが、その時はそこしか空いていなかった。

三叉路にあるため車の往来がやかましく、寝るために雨戸を閉めると蒸し風呂のようになった。

だが私は我慢した。とにかく、きちんと授業に出よう。ただそれだけだった。