学習塾に行っているやつらを見返してやるっ!

小学5年生頃になると、少数の子どもたちは学習塾に通うようになった。

といっても田舎のことである。中学受験があるわけではない。

でもなぜかその塾は評判で、頭の良い子も悪い子も、次第に行くようになった。

 

私の家は、両親ともに教員をやっていたため、そんなに裕福でないことはなかった。

だから、私も学習塾に行きたいと思った。

というのは、学校の勉強が詰まらなかったからだ。

学習塾に行けば、もっと高度の内容を教えてもらえると思ったのだ。

 

でも、親は私を学習塾に行かそううとはしなかった。

勉強とは自分でやるものだ、というのが私の両親の考えだった。

その代わり、両親は私に習字と、珠算を習わせてくれた。

読書はたんまりさせてくれた。いわゆる「読み、書き、そろばん」である。

 

私は字はあまりうまくはならなかったが、珠算の方は、もともと素質があったのか、ぐんぐん上達した。

珠算塾では3班に分かれて各級ごとに習っていたが、私はあっというまに級が上がり、ほどなく一番上の班になった。

私は結構負けん気が強い。それから集中力はある。

こんな私は、きっと珠算に向いていたのだろう。

いろいろあったのだが、結局私は小学6年生のはじめに珠算塾をやめるまでに1級をとった。

珠算の先生は、私のようにとんとん拍子でうまくなったのは異例のことだと、私がやめるのを惜しんでくれた。

(ただし最近、テレビで「頭脳王」などを見ると、天才たちの計算の速さには舌を巻くが。)

 

さてそんなわけで、私は学習塾には行かなかったが、珠算で頭を働かしたり、読書をたくさんししたことで、頭はずいぶんよくなっていった(と思う)。

小学5年生になって、初めて、実力テストというのがあった。それは教科書に書かれていることではなく、自分の頭を使って考えて答えるテストだった。

私は、学習塾に行っているやつらには負けたくない、と思った。

そして、シャカリキになってテストを解いた。

むずかしかったが、何とかほとんどの答えを埋めた。

 

テストが返ってきた。何と私はクラスで1番だった。

ああ、テストでよい点をとってほめられるのは気持ちのいいものだ、と思った。

特に算数は、難しい問題もあったが、私一人だけ満点だった。

皆は驚きの目で私を見た。

相変わらず、ふだんは汚い格好をして、普通のテストでは(算数を除いて)あまり点がよくなかったからだ。しかも学習塾にも行っていない。

自分はもしかしてテストに対する才能があるかも、とも思った。

 

ただとにかく、私の心の中では、学習塾に行っているやつらよりも良い点をとったことがうれしかった。

そして、学習塾になど行かなくても、自分で勉強すればいいという気持ちが芽生えたのだ。

この時の思いは今でも続いており、それが今回の、独力での医学部・司法試験の受験につながっているとも考えている。