もしかして自分はテストはできるのでは?
私が生まれて初めて、おっ、自分も満更ではないな、と思ったのは・・・・
小学校3年生の時だった。
私はいつもあまり試験の点数はよくなかった。勉強しないからである。
だがある時、先生がある変わったテストをした。
そのテストを見たとき、私はちょっと驚いた。
どれもこれも、知らない内容である。
これは私が授業を聞いていなかったからではない。
その範囲は、これから習うところだった。
当然、皆は驚いて、文句を言った。「先生~まだ習っていませ~ん。」
だが先生はこう言った。
「これは、あなたたちが、どれだけまだ習っていないことを自分で調べて書けるかを試すためのテストです。教科書を調べてもいいから、答えを書いてみなさい。」
皆はぶつぶつ文句を言いながら調べ始めた。当然である。今まで、習ったところを覚える習慣しか身につついいなかったから。
でも私は違った。
実は私の父は大学は哲学科を出て高校の教師をやっていた。
このため、私の身なりは汚い格好をさせていても、家に本だけは山ほどあったのである。
その中に子どもにも分かるような百科事典とか、子供向けの理科のなぜなに本のようなものもあった。
私は難しい漢字をとばしとばし、それらの本を読んでいた。
もちろん、正確に理解することは無理。でも読んでいるという雰囲気が好きだった。
だから、先生がこのテストをしたとき、私は心の中でちょっと、ほくそ笑んだ。
こりゃ、自分のためにあるようなテストだ、と。
そうして、テストの結果が帰ってきた。
先生は私に結果を渡すとき、ちょっと驚いたような顔をした。
そして、先生は皆に言った。
「今回のテスト、○○君(私の苗字)だけが満点です。」
へえっと、驚きの声が上がった。
私はいつもテストでいい点を取ったことなどなく、優秀な子たちから歯牙にもかけられていなかったのに、いきなり満点を取ったのである。
逆にその子たちは今回のテストの点はずいぶん悪かったのだ。
私は、ちょっと照れ臭かったが、うれしかった。
それまで私は勉強ができるとほめられたことはあまりなかった。
でも、これからは少しは勉強しようと、少しだけやる気になったのだ。